天知茂の急逝によりシリーズがストップしていた土ワイの名物シリーズ「江戸川乱歩の美女シリーズ」が復活した。計6作品で明智小五郎を演じることになる北大路欽也主演シリーズ第1作が本作だ。当時のテレビ雑誌(テレビガイドか何かかな?)の「試写室」より引用しよう。
試写室■二代目明智さっそう登場/北大路の若々しい魅力!
明智小五郎が帰ってきた。パソコンを駆使し、スキューバダイビングをやり、鳥を愛する、よりスマートな男になって…。北大路欽也ふんする明智小五郎シリーズの第1弾。脚本・吉田剛。
◇強風の中、花吹雪が舞うある夜。バイオリンの激しい音色が響く涼子(夏樹陽子)の屋敷に、怪人が現れた。その男≠ヘ自らを恐怖王と名乗り彼女の宝石を奪うと宣言して去った。事件を聞いた波越警部(坂上二郎)は、明智(北大路)とともに涼子の屋敷を守るが…。女性バイオリニストで、女王きどりの涼子。それをとり巻く人間たちの確執。恐怖王の巧みな変装に右往左往の波越。推理ドラマにプラスアルファの楽しみは健在だ。北大路も、故・天知茂とは違った魅力を出して、まずは合格。
◇その天知茂夫人、臼井純代さんは「大変面白かったです」とニコリ。「北大路さんは2代目の明智役に決まった時、主人の仏壇の前で手を合わせてくれて。それを見て、ああ、これで主人もバトンを渡せたな、と…」。あふれる涙をふいていた。
ここにあるように、私も2代目の北大路欽也には好感をもった。別のインタビューに答えた北大路は乱作せずに年に1〜2本のペースでやっていきたいと答えていた記憶がある。8年で25本も製作した天知茂主演作ほどは出来ないが、逆に一本一本をじっくり作ってより良い作品を見せていきたいという北大路の意気込みが感じられるコメントだった。その言葉どおり、5年間で6作に主演したが、結局それでジ・エンド。私としては6作目でかなり北大路の方向性が見えてきた、これからが楽しみになったと思っていたのだが……天知茂にはあった独特の色香、いかがわしさが欠けていた、といえるかもしれない。 あと、北大路欣也に代替わりするにしても、他のキャストを総ざらい変える必要はあったのだろうか。例えば、西村京太郎のトラベルミステリーも、十津川警部だけを三橋達也から高橋英樹に変更しただけで、雰囲気までもがらっと変わって若々しくなった。そういう意味で、2作だけの出演に終わってしまった藤吉久美子の文代や、小野田真之の小林少年、何よりも荒井注の波越警部は変える必要がなかったのではないか。坂上二郎は悪い役者ではないが、波越警部にしてはどうもずれた感じが否めないのだ。
閑話休題。さて、北大路明智第1作の「妖しいメロディの美女」。原作クレジットは、「仮面の恐怖王」となっているが、メインストーリーは「怪人二十面相」だ。そもそも、「仮面の恐怖王」自体が二十面相シリーズの一編で、恐怖王は黄金仮面の変装、黄金仮面は二十面相の変装という二重三重構造になった作品である。ただ、「怪人二十面相」をタイトルにしてしまうと「子供向け」という印象を与えてしまうからであろうか、「仮面の恐怖王」のタイトルと設定を使い、味付けをして「妖しいメロディの美女」となった。原作にはない殺人事件を交え、決して人を傷付けない怪盗・恐怖王(声:岡部正明)と、小早川涼子(夏樹陽子)をめぐって起きる連続殺人の謎を、北大路欣也の明智小五郎が追っていく。事件解明のシーンでは、お約束の明智の変装シーンがあるが、今回はちょっと違った味付けがなされていておもしろい。
どうあがいても天知茂が築き上げたイメージ、世界を越えることはできない。それだけ、強力なイメージを植えつけているともいえるが、その中でも北大路欣也の明智小五郎は、天知茂には無かった「知的」な要素を+αすることには成功していたといえるだろう。残念ながら北大路欣也の明智小五郎は6本で終わってしまうものの、この第1作目は方向性を示すにふさわしい傑作であった。 夢野みさを |