北大路欣也主演作には、“妙な味”の作品がある。
本作がまさしくそうで、脚本家とプロデューサーは何を考えてこの作品を製作したのだかが分からない。
原作は、乱歩作品の中でも初期の傑作短編、『押絵と旅する男』。しかし、これは明智探偵が登場しないうえに、殺人事件が起こる探偵小説ですらない。”奇妙な味”の小説なのだ。
これまでも土ワイでは、明智が登場しない”奇妙な味”の小説が、明智物としてドラマ化されたことはある(『天使と悪魔の美女(白昼夢)』『禁断の実の美女(人間椅子)』など)。しかし、今回のドラマ化ほど、違和感が残るものではなかった。なぜなら、これまでは原作からはタイトルだけを借りて本編は別の作品から取っていたり、それなりに推理ドラマとしての骨格を備えていたからである。
この作品がこれまでのいずれとも異なるのは、結局、真犯人に自白させることはできたが、そこに「超自然的な力=愛の力」を介在させてしまったことだろう。犯人の代わりに、謀略で殺された恋人の「愛の力」で押絵が歳を取っていった、というのだ。そして、本来なら60歳の老女であるはずの犯人は、どう見ても20代にしか見えない。最後、罪を暴かれ進退窮まった犯人は、自らの年齢が封じ込められた押絵を引き剥がす。ここからがホラーだ。京都妖怪地図か何かを見てるんじゃないかと思わせる。急にどこからか風が吹き、見る見るうちに犯人の姿は若い美女から白髪の老婆へ……しかし、メイクが下手くそで。フィルム撮影だから少しは救われたけど、これでビデオ撮影だったらとても見られたものではないですな、という出来の老婆への変身だった(苦笑)。更には老婆になった(本来の年齢に戻った)犯人は車で逃走。明智も、小林の運転する車で後を追うが、結局、逃走車は明智たちの目の前で爆発、炎上。しかし、焼けた車の中からは犯人の姿は発見できなかった……。犯人が逃亡して死んで(?)、犯人の家に戻った明智は、そこで若返った女性の押絵を発見する。封じ込められていた年齢を犯人に戻したため、押絵の方は最初に作られた年齢に戻った、というのだ。
北大路版でおなじみ、最後のパソコンへの事件名入力のシーンでは、「この事件は記録しなくていい」という明智の言葉でしめている。それはそうだろう。「超自然な力」で解決するなら、明智のような名探偵は不必要だからだ。乱歩も、本格探偵小説を書く時に明智を出すと論理的に解決させなければいけないからという理由で、出さなかったケースが多かったくらいである。
それがここでは禁を犯してしまった。
この反動か、次回作は土ワイで2度目のドラマ化となる「魔術師」だったが、これが北大路欣也の明智小五郎の見納めになるとは夢にも思わなかった。時代劇に精力的な北大路も、火サスで検事シリーズ、土ワイでも「事件」シリーズなどと2時間の現代劇も続けているだけに、明智の降板は残念なことだが、それについては「妖しい稲妻の美女について」で語ることにしよう。 夢野みさを |