“日常”が存在している
男性が書いた同性愛文学
稲垣足穂『ヴァニラとマニラ』(河出文庫/560円)
比留間久夫『ハッピー・バースデイ』(河出書房新社/1200円)
エドマンド・ホワイト『ある少年の物語』(早川書房/1700円)
サン出版『小説JUNE』47号「JUNE文学ガイド」掲載
この10月から11月にかけては“男性が書いた”同性愛文学が豊作でした。同じ男性である私としては少しは恥ずかしくもあり(このテの本を書店で買う時って苦労なんですよ。AVを借りる時みたく普通の本と一緒にレジに……ちょっと横道にそれてすみません)、また喜ばしくもありました。それは、少女マンガのように“美少年が”“年上の男性に”“犯されて”云々という、ナニもなければアレもしない絵空事の虚構ではなく、 “日常”が存在した上で成立しているからです。
ところで、JUNE読者の皆さん(この場合、女性です)は、同性愛をどのようにとらえているのでしょうか。勿論、文学(漫画)における、です。
どうも最近のJUNEを見てると(私が買い始めたのが36号だからそんなに知らないけど)、ただのミーハー集団って気がしないでもないんですよね。ロマンJUNEはその象徴、ですか。私も思わず買ってしまったけど。どの頁めくっても“ 美しい”“奇麗”“可愛い”の三拍子揃った少年たちが悩ましくも麗しい表情をしてたりする、現実にはありえない、いや一歩間違えると下品なやおい同人誌になりかねない作品までチラホラ見えます。(あくまでも男から見て、です。私だってセルジュやトーマに魅かれたし、陽一クンや金剛のシュウの大ファンです。でも……それでも、さ。やっぱり……)
私は、それはどこか違うと感じているし、JUNEに同人誌レベルにまで落ちて欲しくない。一読者として。
そこで、冒頭でも触れたうちのいくつかを紹介したくてペンを執りました。(ようやく本筋に入れた)
中島梓先生は名著『美少年学入門』の中でこう云っている。――稲垣足穂は二十過ぎてなおも若衆でありつづける男の子を指して「年増少年」といった。年じゃない、のよね、また強調してしまうけど。(20~22頁。傍点そのまま)
その足穂のエッセイ(小説?)集が久しぶりに文庫化されました。中島先生は「年じゃない」と云っておられますが、私は足穂作品集を読んでいて思いあたることがありました。中島先生は「瞬間である」と前書の中で述べておられますが、足穂も実は、同じ思想を持っているのです。彼が『少年愛の美学』において「少年の命は夏の一日」と定義しているし、他にも同様の表現が見られるのです。今度文庫化された『ヴァニラとマニラ』は、帯にあるようにA感覚に関する作品集で、その世界(ボキャブラリー)の広さには改めて感嘆させられます。A感覚というのは、まあ、いわゆるソドム、お尻のことといったらよいでしょうか。たぶん、世の中の男性諸氏はこのエッセイに懐かしさを覚えるであろうことは必死の――例えば『麦ちゃんのヰタ・セクスアリス』(立原あゆみ、コバルト文庫)等では語られない男の“A感覚遍歴”を知ることができる唯一の――ものであることは私が保証します。
今年の小JUNE四月号で14通もの推薦文が届いたという比留間久夫さんの第二弾が刊行されました。その名も、『HAPPY BIRTHDAY』。前作の語り手は「僕」でしたが、今回はのっけから驚かせてくれます。エバちゃん、バンビ、ラララ――いわゆるゲイ・バーの内側からストーリーは展開していきます。新鮮さを失しないため、あらすじは紹介しませんが、傑作であることは間違いありません。ただ、私にとってみると、自分自身の経験ともダブル所もあり、面白いだけではなかったのですが……
最後に。 “あぶないものほど美しい” などというデリカシーのかけらもないコピーをつけられた『ある少年の物語』を紹介します。
これは、ホワイト氏の自伝的四部作の第一部で、誰にでも起こり得る同性愛行為を実にみずみずしく描いています。『潮騒の少年』とは違った意味で美しい作品でした。ぜひ読んでみて下さい。
(東京都/お~いしいよ♥)
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|---|---|---|---|---|
| 稲垣足穂 | ヴァニラとマニラ | 河出文庫 | ちくま文庫 稲垣足穂コレクション4 | 筑摩書房 稲垣足穂全集3 |
| 比留間久夫 | ハッピー・バースデイ | 河出文庫 | 河出書房新社 | |
| エドマンド・ホワイト | ある少年の物語 | 早川書房 | ||





