三田菱子さんの書き下ろし
『ガーデンセール』が絶品
三田菱子『鼓ケ淵』(角川ルビー文庫/500円)
エドマンド・ホワイト『美しい部屋は空っぽ』(早川書房/1700円)
M・フーコー『同性愛と生存の美学』(哲学書房/2163円)
太田典礼『第三の性-性は崩壊するのか』(人間の科学社/1500円)
平塚良宣『日本における男色の研究』(人間の科学社/980円)
岩田準一『本朝男色考』『男色文献書誌』(岩田貞雄・限定版/各4800円)
サン出版『小説JUNE』48号「JUNE文学ガイド」掲載
小J2月号で“JUNE読者は同性愛をどのようにとらえているか”などと偉そうなことをいってしまいましたが、その前後にあの角川スニーカーから三冊のJUNE小説が文庫化されました。前回にも文庫化された三田菱子、原田千尋両先生、今回初めて文庫に入った野村史子先生の3作品です。で、今回は三田先生の『鼓ケ淵』を推薦します。その中でも同時収録の『ガーデンセール』が絶品です(『鼓ケ淵』はカセット化もされましたし、少し前にも増刊も出ていることですから割愛します)。
『ガーデンセール』の人物には名前がついていません。「男」、「船長」、そして「教授」……しかし、それぞれの印象からいえば、名のある人物よりも強烈に、かつ鮮烈に脳裏に焼きついています。そのせいでしょうか。最後、男が川に流れさる枕-船長と十年もの間使用してきた-を眺めながらいずこへと去っていく姿はとても強く心に残りました。
そういえば、前回の原稿を書いたのが11月だったせいもあって、すでに続編が出てしまったものもありました。『ある少年の物語』のエドマンド・ホワイトの『美しい部屋は空っぽ』がそうです。前回、“デリカシーのかけらもないコピー”と私が評した宣伝文句はここにきて究極に至りました。-今夜はすごくゲイな気分。今回、この作品につけられたコピーです。これ、本文中の台詞なんですが、いくらなんでもこれをキャッチ・コピーにするとは……早川さんも大きく出たものです。ですが、コピーはともかく、内容は前作を上回るものに仕上がっています。まだ二章しか読んでいないので総括的にはいえませんが、ただのゲイ小説ではありません。男でノンケの(?)私から見ても、昨年のベスト3に入る作品だと二重丸に花をつけてもいいくらいです。ぜひ、ご一読を。
さて、前号で“同性愛の云々”と偉そうにほざいた上で、それを知るにはと小説を紹介しただけで終わってしまいましたので、ここでは若干の参考書(?)を記しておきます。もし、興味のある方はどうぞ。
まず、哲学者としても著名なミシェル・フーコーによる『同性愛と生存の美学』。これは、『性の歴史』等で知られる、彼の同性愛・ゲイに対するインタビューを中心にまとめられたもので、外国人のゲイのとらえ方を知るには格好の資料です。
続いて人間の科学社刊行物から二点。こちらは古書店で求めましたので現在入手可能かは不明です(日本書籍総目録には記載されているので注文で手に入るかも)。『第三の性』はかなり広い範囲で同性愛を論じていますので、古書で400円くらいなら買っても損はないでしょう。ちなみに、神田のある古書店にはまだ数冊あったと思います。『日本における男色の研究』は本の厚さも、内容も薄いです。もとより学校の先生が書いたものなので、あまり資料をあさることができなかたのでしょう。こちらは図書館で見るのがよいと思います。
そして最後に。たぶん図書館(大きいのは別です)にも、書店にもないだろうと思うのが、江戸川乱歩の随筆に名の見られる岩田準一による『本朝男色考』と『男色文献書誌』の2点。『本朝~』の方は古代から室町に至るまでの日本の男色史です。室町までで終わっているのは、連載していた雑誌の廃刊と、本人の死去に伴うもので、詳しくは乱歩の随筆(『本朝~』にも収録さ荒れています)を参照してください。尚、これには他にも男色に関する随筆、「男色大鑑」使用の男色用語解説が付録としてついています。『男色文献~』は別名を『後岩つゝじ』とも云い、「伊勢物語」に始まり「歌舞伎史の研究(昭和18年9月)」に至るまで1,093冊もの国内の男色文献を集めた力作です。これにも乱歩の序がありますが、江戸までの文献はほぼ完璧と云っていることから、今現在一番信頼がおけるのではないでしょうか(但し、日本のみです。あしからず)。こちらは、岩田貞雄氏に直接請求するのがいいと思います。在庫を確認すると折り返し郵便振込用紙を返送してくれますので、後は待つだけです。それでは、また。(1991.1.7記)
(東京都/お~いしいよ♥)
前号に続いて文学ガイドに採用されたのですが……前号と今号で書いたことが引き金になってちょっとした事件がありました。ここで書いたことにその出版社の担当編集者が怒って、編集部にFAXをしてきたというものです。このことは、このあとの小JUNEの読者プレゼントコーナーで少し触れられていましたが……結局、話題にならないまま、立ち消えになっちゃいました(苦笑)。
後半のフォントサイズを小さくした部分(罫線で囲んだ部分)は、残念ながら雑誌ではカットされてしまった部分です。送った原稿のコピーが見つかったので、復元しておきます。(2000/02/03更新)
掲載時にはカットされてしまった部分で紹介している岩田準一氏の『本朝男色考』『男色文献書誌』の2冊ですが、何と今年上旬に合本されて、一般の出版化されていました。合本されて4,800円税別ですから、ちょうど半額、ということになります。興味深い書誌ですので、ご興味がある人がいましたら、ぜひ一読されることをお勧めします。[2002/12/2追記]
| 紹介作品購入(amazonから購入可能) | |||
|---|---|---|---|
| 三田菱子 | 鼓ケ淵 | 角川ルビー文庫 | サン出版 |
| エドマンド・ホワイト | 美しい部屋は空っぽ | 早川書房 | |
| M・フーコー | 同性愛と生存の美学 | 哲学書房 | |
| 太田典礼 | 第三の性-性は崩壊するのか | 人間の科学社 | |
| 平塚良宣 | 日本における男色の研究 | 人間の科学社 | |
| 岩田準一 | 本朝男色考・男色文献書志(合本) | 原書房 | |





