どうして素敵な男の子って、
みんなゲイなの?
クリストファー・デイヴィス『ぼくと彼が幸せだった頃』(早川書房/1500円)
マガジン・マガジン『小説JUNE』55号「JUNE文学ガイド」掲載
AIDS――後天性免疫不全症候群というおそるべきウイルス病は、一九八〇年にアメリカの男性同性愛者から発見され、またたく間に米全土に侵食、その毒牙は全世界へと蔓延していった……。
今回僕が深い感銘を受けたC・デイヴィスの『ぼくと彼が幸せだったころ』(Valley of the Shadow)は、このエイズ問題を主軸としたアメリカン・ゲイ文学の傑作である。
エイズをテーマにしたゲイ・ノベルズと云えば、ほかにもモネットの『ボロウドタイム』(上・下)などがあるが、『ぼくと彼が…』は、それらとは違った新鮮さがあった。
まず第一に、ストーリーはさることながら、文体が明るい。この作品は、エイズに感染した《ぼく》(アンドルー・ジョン・エリス)が、ゲイとして、人間としての自分の一生、魂の記憶を書き綴った物語である。特に、この邦題が示すように、《彼》(テディ)との生活の回想が主となっている。しかもテディが先にエイズで死に、その後を追うように自分自身もエイズにかかってしまうという、悲劇的な内容。であるにもかかわらず、この小説からは暗さが微塵たりとも感じられないのだ。エイズをテーマに盛り込みながらここまで読後が爽やかに感じられるのは特筆ものと云える。
そして第二に、視点がバラバラに見えるということ。こう書くと欠点のようだが、違う。この小説における美点、最も深く考えられ、一語一語が無駄なく置かれた結果なのだから。実にすばらしい技法である。一見、時間があちこちに飛んだり、また人物が入り乱れたりしている箇所が、見事な伏線となっていて、決して読者を混乱させることなくストーリーに溶け込ませてしまう。
今回のコピーは「どうして素敵な男の子って、みんなゲイなの?」。以前に僕は、E・ホワイトの作品を紹介する時にコピー批判をしたが、今回のコピーに何も云うことはない。ゲイだとか、ストレートだとか、本当は、そんな区別なんか必要ないんだ。『ぼくと彼が…』を読み終えた時、解ったから。だったら、こんな帯コピーごときでギャーギャー騒ぐなんてナンセンスだから。だから、素直に前言も撤回したいと思う(もう一年以上も前だけど)。こういうゲイ・ノベルズを男が買ったとして変な目で見る女性店員がいたら、その店員の認識不足。そう割り切るより仕方あるまい。願わくば、出版社各位は女性だけではなく、ゲイやそうでない男性たちにも買いやすいようにしてほしいと思います。
(東京都/お~いしいよ♥)
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| クリストファー・デイヴィス | ぼくと彼が幸せだった頃 | ||





