名作『風と木の詩』の
その後を描いた名編

のりす・はーぜ著『神の子羊Ⅰ』(光風社出版/1250円)

未採用原稿(執筆日時不明) 

光風社出版『神の子羊I』表紙 七〇年代前半に、世界の漫画史上に残る凄い少女漫画が登場した。JUNESTにとっては最早バイブル的存在となっている二冊、萩尾望都『トーマの心臓』、竹宮惠子『風と木の詩』である。この二種の本は、実に20年もの長きに亙って何ら色褪せることなく読み継がれてきた。恐らく、今後も読み続けられるに違いない。

 そして、『神の子羊~アニュス・デイ』。竹宮女史のブレーンで友人の増山のりえ(のりす・はーぜ)によって書かれたこの物語は、まごうことなく『風木』の世界である。時代ときをずらし、セルジュたちの子孫らによって本編で語り尽くせなかった謎、エピソードを探っていく。その趣向自体は目新しくない。が、一歩間違えると失敗作となる危険性を孕んでいる。もちろん作者本人が描く分には遜色ないだろう。しかし、他人(特にその作品のFanと称する人)が描いた場合、下手な同人誌の類までレベルを落としかねない(実際、私もそれをやる処だった)。この作品の作者がそのような愚に堕ちなかったのは、いろいろあるだろうが、何よりも作品世界を《自分のものにしてしまった》ことに尽きるだろう。

 《自分のものにする》――できそうでいて、なかなかできるものではない。この不可能事を(あえてこう呼ばせてもらうが)のりす・はーぜは完全にこなしてみせた。この『神の子羊アニュス・デイ』によって。

 アニュス・デイ。これはレクイエムの中の一節である。

 私は、代々の仏教徒なため、賛美歌やレクイエムなどの(キリスト教系)宗教音楽にはまったく縁がなかったが、モーツァルトくらいなら聴いていた。何か暗くて嫌な曲だなというのが私の所感だった。でも、この本のあとがきにあるフォーレ版を聴いた処、それまでとまるで違った感覚に驚いた。アレッド・ジョーンズのボーイ・ソプラノによるCDで、彼のしっかりした歌唱と、それを支えるかの如くの合唱は、どれをとっても美しかった(ただ、あとがきにある合唱団版のはまだ未聴。誰かCD番号を教えて欲しい)。少し話が逸れてしまったが、この本を読むときには、BGMとしてかけるのも一興かと思う。

 内容については云うことはあるまい。続きは大JUNEに連載中なのだから。ともかく、まだ未読の人にはぜひおすすめの一冊である。

(東京都/お~いしいよ♥)

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最終更新日:2009/04/27(月)

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